一九九八年十月のアマゾン河への調査旅行へ行くことができた。このときはアラグアイア河とトカンチンス河それぞれ一週間くらい河にもぐったり釣りをしたり投網を打ったりして現地の魚を採集した。それ以降時間を見つけてシング?河 タパジョス河また本流のソリモエス河の上流域ペルーのイキトス周辺などを訪れプレコをはじめとするアマゾン河の魚を採集し現場の環境や生息状況を見てきた。 
 プレコの棲息地と言ってまず思い浮かべるのが流木だ。プレコを水槽で飼育する際にはほとんどの方が流木をレイアウトに使用するくらい流木とプレコは切っても切れない関係にある。 わたしはプレコを飼育し始めたころよりアマゾン河でプレコが流木にへばりついているところをこの眼で確かめたいと思いつづけてきた。
 私にとっての初めてのアマゾン河はアラグアイア河のとある支流だった。現地に着いた私は水中メガネをつけて半信半疑で流木の下へ潜った。白濁した水の中  確かにアマゾン河でも流木にプレコはくっついていた。アラグアイアではゴールデンロイヤル ニュースタークラウン ブロードバンドタイガー スネークスキン など。 トカンチンス河ではオレンジロイヤル ドラゴンスタークラウン スパイ二-タイガーなどが流木にへばりついたり頭を突っ込んだりして住処にしている。 
 私見ではロイヤルプレコやレポラカンティクスの一部の種において歯が発達することでタイガープレコの仲間においてはその一部の種を環境に合わせて柔軟に増やしていき旺盛な繁殖力とあいまって流木を中心とした生活圏を選択して繁栄してきたのだという印象をうけた。  しかし『流木にはプレコ』 のはずがそこで見られるプレコの種類があまりにも少なすぎることにイマイチ充実感を得られないでいた。
 他の華やかなプレコたちはどこにいるのか?

アラグアイア河の支流でゴールデンロイヤルを沢山採った我々は次にトカンチンス河の本流でのプレコ獲りのために飛行機に乗った。
到着したのは写真?のような切り立った急流の岩場。対岸が霞んで見えないくらい遥か彼方にあるほどの川幅だ。想像を絶する水量である。 漁師について河に入ってみる。思ったよりも遥かに流れが速い。油断すると流されてしまいそうなほど強い水流だ。 戸惑っているとたった今準備体操もしないで潜っていった漁師が水面に顔を出した。手にはプレコを持っている。 『ほんまにいるんや!おれもこの手で獲りたい。』 
つかまっているだけで手が切れそうなごつごつした岩肌をたよりに恐るおそる潜ってみた。
初めて潜ったトカンチンス河は濁っていてそう遠くまでは見えない。岩盤の隙間に沿うように視線を滑らせると『いた!ニュータイガープレコ。』捕まえようと手を伸ばすが一瞬のうちに見失ってしまう。(めっちゃきれい。まるで別物の様な美しさ。)店の水槽では手掴みでお客さんに感心されている私だが本場のプレコ相手では歯が立たない。 目が慣れてくると岩の割れ目や裏側にいるいる。激流の中岩肌をプレコが縦横無尽に遊んでいる。今まで水槽の中では見たこともないような機敏な動きでちょろちょろと滑るように動き回っている。30分程格闘してようやく一匹を捕まえた。獲れたてのニュータイガープレコは物凄く美しかった。それが自然界で見たからなのか長年の夢がかなったから美化して見えたのか今となっては分からないが10年以上経った今でも鮮明にわたしの瞼に焼き付いている。私は時の経つのも忘れて必死でプレコを追いかけた。3時間くらい掛けてニュータイガー2匹とダルマ1匹とイミテーターカイザー1匹とスカーレットトリム1匹を捕まえることができた。 しかし、深場から上がってきた漁師を見ると腰につけた虫籠にはち切れんばかりのプレコを押し込んで悠々と煙草をくわえていた。 私が驚いて『すごいなあ!』と自分の獲物を見せると『これが3回目や』とストックの桶を指差した。アマゾン河の漁師の動体視力と運動神経に度肝を抜かされた瞬間だった。
 この時を境に私はプレコが流木よりもむしろ岩場に多くいることをはじめ多くの一般的なプレコ飼育に関する知識が必ずしも正解ではないことを身をもって体験した。
そしてアラグアイア支流の流木と砂地の川では会えなかった種類のプレコたちにも多く出会うことができた。先の獲物をはじめガリバー ウッディースカーレット ドラゴンスター クプー スタークラウン そしてアカリエスピーニョ。流木地帯で出会ったよりも圧倒的に多くのプレコが岩場にはいた。
 2年後 私は待ちに待ったシングー河のアルタミラにいた。プレコの聖地といわれるシングー河に一日も早く潜って見たかったのだ。この河にもそそられる岩場がそこらじゅうにあった。写真?
 はやる気持ちを抑えて早速ボートでポイントめがけて進む。 しばらく行くうちになにやら違和感を感じる。『何かヘン。なんやろう? あ、この河は水が透明なんや!』アラグアイアもトカンチンスも河の水は白濁していた。1M先が見えないくらい濁った水があたりまえだった今までのアマゾン河の印象のせいで私はこのシングー河のまっ透明な水に感動を覚えた。底に自分が乗ったボートの影が小さく見える。水深が深くなるにつれ空の上に浮かんでいるような感覚に包まれていく。この初体験にしばしぼーっと眺めていると河底に金色に光るものがふらふらと流れてきた。『ああっ。ゴールドエッジマグナムや!』
今まで黄色いプレコにどうしてゴールドなどという大袈裟な名前が付いているのか納得がいかなかったが一発でこのもやもやも吹き飛んだ。直射日光のスポットライトを浴びてまるで金のインゴットのような輝きを放つプレコがボートの真下を悠々と横切った。現地で見られる魚の色彩は、いつも店で見て知っている筈のそれとは全く違った。当然のことながらその後はお約束のプレコ獲り。トカンチンスで鍛えた(?)技を駆使ししばし時間を忘れる。透明度の高いシングーでは視界が遠くまで効く。結構的深いところでも太陽の光が届くためさらに多くの情報を得ることができた。プレコは岩の割れ目や板状の岩の裏側に身を潜めている。2?30cmの小さなものではよく動く為か安心できずあまりプレコが寄り付かないようだが5?60cmを超えるどっしりとした岩の下には必ずと言ってよいほどプレコが隠れている。多いところでは2?30匹の大小様々なプレコたちがひしめき合ってこっちを向いている。
シングー河では恐ろしいほどのスピードでコケが生える。川底の岩盤に飛行機雲のような直線を見つけた。段差が1cm近くもあろうかというほどの苔の絨毯にできた溝である。これはプレコが苔を食べた後であたかも除雪車が通った後の状況に似ていて時間がたつに連れて苔が再生して徐々に埋もれていく。この『プレコライン』を辿っていくとやがて一心不乱に苔を食べているヤツに遭遇する。私はこの戦法で多くのプレコを見つけることができた。シングー河では赤道直下の太陽光とクリアーウォーターの好条件下で河底に大量の苔を毎日驚くほどのスピードで生産するシステムが出来上がっている。このような自然環境を基に『プレコ飼育に苔は切っても切れない関係にある』ことになっているようであるがこの時私はこのことに疑問を持った。 なぜならプレコラインに接近してよーく見てみると苔の中にはイトミミズのようなものやミジンコのようなプランクトンの類 とび虫のような水生昆虫 瞬時に移動を繰り返すゴマ粒よりも小さい謎の生き物などが生息しておりどうやらプレコたちは苔を目当てにしているというよりはむしろ苔の中に潜んでいるこれらの微生物を目当てに苔をついでに食べているように見える。辺りの岩場ではメジャープレコたちに次々と出会えた。オレンジフィンカイザーをはじめマツブッシー オパールドット トッピングローボ オレンジフィンブラック(こいつは深場にいたので自身では捕まえられなかった)ルビースポットマグナム スターライトグローボ シングーニュータイガー  ウルトラスカーレット オレンジフィンクプー ロイヤルスポットグローボ ホワイトトリム など いろいろ。
港から僅かボートで10分位のところでのことである。この経験より多くのプレコは植物食というよりは雑食性であることがわかった。(インぺリアルゼブラとニューインペリアルダップルド キングタイガーなどはポイントが違うらしくここでは見ることはできなかった。)

野生のプレコを観察するうえでもうひとつ欠かせない河がある。タパジョス河だ。アラグアイア トカンチンス シングーと同じくブラジル高原に端を発する同じ性格のこの河川にはきっと負けず劣らずのわくわくするプレコがいるはずである。シングー河での新種プレコラッシュで業界が沸いていた頃 私は地図を見て空想を膨らませていた。 そのころから十数年たった2006年 ようやく念願だったタパジョス河に潜ることができた。
 タパジョスはそれまでのどの河川よりも白濁が酷く視界は20?30cm程。岩沿いに潜って顔を近づけ目を凝らして探してみるがなにもいない。いや、何も見えない。見えないどころか水流が強く自分の体が流されてしまい何回も遭難しそうになりながら必死で岩にしがみついてプレコを探すがなにも見つけられない。写真4 同行してくれた漁師はこの急流の中コンプレッサーからのエアーチューブを口にくわえただけでて何十メートルも潜っている。危険極まりない。
いつまでも波と格闘していると漁師が深いところから戻ってきた。腰のプラケースにはプレコがぎっしり詰まっていたのは言うまでもない。一番多いのはブラックウイズホワイトカイザー ホワイトエッジパレぺコルティア ブルーアイアカプレコ 次いでグレイトリム インペリアルタイガー クイーンアラベスク グロースポットスパングル そして ちょっとだけタイタニックもいた。

以上4つの代表的なアマゾン河の支流を垣間見た印象では、全体的には流木よりも岩場にプレコが多く生息しておりそこは総じて圧倒的な水量と共にかなりの水流である。各河川別の特徴を見てみると他の河川と比べてシングーには特に多くの種が生息しており同時に美しく派手な色彩のプレコが圧倒的に多かった。兄弟河川であるが故に考えられる同じ先祖を持つ各河川のプレコについて考えてみよう。最もポピュラーなカイザープレコに関してみてみるとトカンチンスではイミテーターカイザー タパジョスではブラックウィズホワイト のように黒いボディーに白いスポット模様であるのに対してシングーでは黒い地肌に鮮やかな黄色いスポットにこれまた派手な黄色いエッジが各ヒレを縁取ったオレンジフィンカイザーが親戚同士と思われる。またシングーのウルトラスカーレットトリムではトカンチンスのスカーレット及びタパジョスのタイタニックトリムなどが相関関係にある近縁種だと思われるがウルスカほどに強烈で派手な色彩をもつものはいない。また極めつけは一番人気、シングーのインペリアルゼブラ。トカンチンスでは同じ先祖を連想させる種が思い当たらないがタパジョスではL?270チョコレートゼブラであろう。成長するとそのコントラストは鈍るが幼魚期のそれはインぺに酷似した美しさを持つ。しかしながら成長してから先の長期にわたる過程でトータル的に見ればインぺの比ではなくまたもやシングー産プレコの美しさに軍配が上がってしまう。この 河川による色彩との関係は淡水エイのポルカドットとマンチャデオーロ クロコダイルの関係でもわかるようにシングーのポルカが圧倒的な派手さ コントラストを持つ。  これはシング―特有のまっ透明なクリアーウォーターが多くの色彩的に派手な美しい種を育んできた主因と考えられる。 今回はページ数の関係で代表的な種に限って取り上げてみたが他にもブッシープレコ マグナムプレコ タイガープレコ クラウンプレコ グローボプレコと呼ばれる系統なども各河川に分布し繁栄を続けてきた。 また これらのプレコの分布はブラジル高原に源流をもつ兄弟河川のみならずアマゾン河本流以北のスリナム ガイアナ ベネズエラより流れ込む河川にも同じ祖先をもつと考えられるプレコの生息が知られる。どちらが先かは分からないがはるか本流を泳いで渡ってきたのだろう。御苦労さま。  他にも特筆すべきネグロ河水系はブラックウォーターとして他の河川とは一線を画しているためまた違った生態や色彩のプレコが存在する可能性が高い。 私は未だ訪れたことがないので具体的なことは言えないがブラックウォーターの弊害(?)のため苔が生えにくく他の河川に比べるとプレコの生息数は少なそうだ。写真N その代り赤茶色の水で繁栄してきた特異性がそこにはあるはずだ。オレンジフィンレオパードやブリーザードトリム スターダストぺコルティア バタフライ オレンジフィンアーマードなどがよく知られるところだがあれだけ大きく支流も多い河川であることを考えると少なすぎる印象は否めない。 またおもな河川には必ず見られるロイヤルプレコもネグロ河産のものは聞いたことがなく他の河川とは全く違った状況である可能性が強い。ぜひ次の機会には予定の一つに入れてみたい課題だ。   最後に。ここに記した状況は何年かに渡って私が経験したことだが季節や年代がそれぞれ異なる場合もあり また、各河川のある地点での状況にすぎない。例をあげると2006,10月に訪れた2度目のシングーは若干白濁しており7年前にプレコがわんさか取れた辺りではほんの数匹獲れただけであまりの変貌ぶりに目を疑ったほどです。これが乱獲によるものか水質悪化によるものか温暖化によるものか 単なる時期的なものか長期にわたる調査をしてみないと分からない部分もありますが何やら悪い予感がしてなりません。いつでもそこに行けばプレコ獲りをして時間を忘れることができる アマゾンの大自然を守ることは我々アクアリストの使命でもある。
   

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